破水、陣痛と私のお産はステージを進め、ついに分娩が開始した。
分娩台に上がったのは午前2時。
病院に到着したのは午後10時で、陣痛らしきものが現れたのは
午前0時を過ぎていたように思うので、なかなかのスピード感。
しかも分娩台に上がった時には陣痛の間隔も5分を切っていた…。
この時、私は、凄まじい勢いで込み上げてくる陣痛を感じながら、
「夫が来るまでは(赤ちゃんを)出すわけにはいかない…」と思っていた。笑
夫も私も望んだ立会い出産。
感動を分かち合うとか、いろんな動機があると思う。
中には「自分の姿を見たら夫が引いちゃうかも」と希望しない人もいると聞く。
我が家の場合は、
そうそう見れるもんじゃないし、見たら?
だった。笑
普通の人なら、妻以外の出産はまず見ることがないであろう。
でも、出産ってとっても大きなイベントで、男性には絶対に経験できないし、
でも自分も母親に出産してもらって存在しているわけで、
これは見とかないとね!!と個人的には思うのだ。
確かに自分の凄い形相を見られるかもしれない。
でも、そんなふうになっちゃうんだよ、という意味でも、私は見て欲しかった。
そして、どんな風に我が子があの場所から出て来るのか、後で教えて欲しかった。笑
妊娠中、日に日に大きくなるお腹を見つめながら、最初は微笑ましく見ていたものの、
途中からは「これ…大きくなるのは幸せなことやし楽しみやけど、出てくるんやんな、おマタから」と連日のように口にし、背筋がぶるぶるっとなっていた。
母親学級で本物の出産のビデオを見た時も、
「おマタから頭が、顔が出てるーーー!」と、産気づきそうになった。
夫も、隣で一緒に見ながら、無言でのけぞっていた。
どうやったら、あの場所から、あんな大きさのものが出られるんだろう
私のおマタでも、それは果たして実現可能なのだろうか
どうなるんだろう、どうなるんだろう
と、不安と期待(?)を入り混じらせていた。
これはぜひ、何としてでも、立ち会ってもらってその時のことを後々話し合いたい!
そう希望していた。
さて、場面は分娩室に戻り、夫が駆け付けてきた。
興奮気味だったけど、落ち着いていて、なぜか首にタオルを巻いていた。笑
ちょっとそのタオル、台所の手拭き用のタオルじゃないかーーー、まあ、いいか。
あ。大事なことを書いていなかった。
夫より少し早かったか遅かったかぐらいで、
最初に病院に電話をした時に応対してくれた助産師さんが、ここで現れたのでありました。感涙
この人を見た時、私は心の底から安心したのを、今でもよく覚えている。
ああ、私、これで出産していいんだーーーー、と。
誤解をしてもらっては困るが、例の助産師さんもいい人である。
ただ、彼女が現れると、いつも不思議なことが起こるので、入院中もビクビクは続いたんやけど…。汗
これで、分娩に必要な人員は揃った。
メインでお産を担当してくださる素敵な助産師、K村さん(仮名)。
何かとご縁のある、ドキドキが止まらない助産師、T野さん(仮名)。
そして夫。
この時の陣痛はおそらくすでにMAXの状態で、
2分間隔でその波が来ていた。
骨盤付近に湧き上がる、経験したことのない痛み。
何かが始まる、何かが出てくる、大きな大きな予感をさせる痛み。
お腹の中にいる赤ちゃんが起こさせるというこの痛みは、
確かに痛いんやけど、辛いわけではなくて、私は終始ドキドキしていた。
痛みが収まっている時に水分を補給し、痛みが来たら「いきみ逃し」をする。
大きく息を吸って、小刻みに吐き、また大きく息を吸って…
何かに立ち向かうような、この作業は、本当に興奮した。
長年やっていたフルートを演奏していた時のことを思い出し、鼻から大きく吸う。口から長く息を吐く。
妊娠中に家で細々とDVDを見ながらしていたヨガを思い出し、大きく大きく吸う。神経を集中させる。
こうして真剣に「いきみ逃し」を堪能(?)していたら、
おうおうコツがつかめてきたぞ、と思っていたら、まさかの
「いきんでいいよ」
とのお言葉。
子宮口が全開になったらしい。
時間間隔も分からないまま、今度は呼吸法の最後にいきむ。
ひっ ひっ ふー うんっ(←いきむ音)
おおー、いきむって、気持ちいい!
いきみ逃しの時は、いきみたいのにそれを許されない状態なわけで、
でもそれが解禁されたとなると、思いっきりいきめるのである。
ひっ ひっ ふー うんっ
ひっ ひっ ふー うんっ
何度か繰り返していたら、
「髪の毛見えてきたよー」
まじでー 夫が髪の毛ボーボーだーって言ってるよー
「頭見えてきたよー」
えーそうなんやー 発露やっけ?排臨やっけ?(テキストを振り返ろうとする自分)
「頭出てきたよー」
おおーなかなかイタイ!会陰裂けるかなー加減しなくっちゃー(←できない)
「頭出たよー」
おっ、急におマタが楽になったっ
にゅるっ にゅるるるるるっ ずるーーーーっ
「うまれましたよー」
午前3時45分、この世に娘が誕生。
何かのスポーツに猛烈に取り組んだ後のような充実感、達成感、爽快感、安堵感。そして疲労感。
興奮していたので涙は出なかったような気がする。
娘の顔を見せられ、あまりの丸さと扁平さに驚き、「かわいい」の一言は出なかった。
そしてすごい毛量で、普通にフサフサだった。「すごい髪の毛!」と言った気がする。
しかしもう、「無事でよかった」。その一言に尽きた。
娘の髪の多さ、顔の丸さとその平たさに驚いたのと同じくして、
分娩所要時間が1時間53分だったのにこれまた驚いた。
病院に着いてからでも約6時間である。
「いいお産になるよ」
そう言い続けたけれど、本当にそうなった。
久しぶりに本気で何かに取り組んだ気がする。
したことのない顔、出したことのない声をもって。
その先にあった、我が子との対面。
ずっと妊娠できなかった日々。
無事だけを祈った妊娠期間。
結婚してから4年半。
そのすべてが一瞬で思い出になった。
いろんな思いを味わってよかった。
妊娠できなくてつらかった。
自分の体に自信が持てなくなった。
夫婦についても自信が持てなくなった。
そんな風に思ってしまう自分が悲しかった。
もちろんこれはゴールでありながらのスタートなんやけれども、
今はまさに育児で絶賛試行錯誤中なんやけれども、
育児に対する自信なんてこれまた全然ないんやけど、やるしかない。
それが今は嬉しい。大変は大変やけど。汗
妊娠も出産も今こうして自分が生きていることも、本当に奇跡。
奇跡のかたまりだなぁって思います。
・・・。
美しく締めくくられそうなこの出産記録。
まだ続きます。
出産は、産後も含めて、出産なのである。
そう痛感させられました。